鉄道全般,  鉄道技術

【電車】車体の重さと、軌道(線路)メンテナンス増。

電車の車体が重くなると、電車が線路の上を走った時に、線路にかかる負担が増えて、線路が変形しやすくなったりすることで、メンテナンス頻度を増やす必要性が出て、線路の維持にかかるコストに影響が出ると言われます。

荷重が一箇所にかかることを避けることが出来る、動力分散方式という形があり、これは、日本の電車によくある形式で、モータのついた動力車をいくつも分散させることで、車輪一つにかかる比重を減らし、鉄道車両が線路に与えるダメージを減らすことにも役立っていると言われます。

https://www.asahi-net.or.jp/~ZZ5J-YSNG/2-Comp/comp_3.htm

時代が進むにつれて、鉄道も保守費用の低減の技術が積み重ねられるようになり、車体の軽量化、省エネ化のための新技術も盛り込まれるようになって来ています。

・東海道新幹線の軽量化の例

https://en.wikipedia.org/wiki/N700S_Series_Shinkansen#/media/File:Series-N700S-J2.jpg

東海道新幹線では、N700系からSiCという半導体素子を導入した新型車両へと置き換わるにつれ、車両の軽量化も進められ、供給された電圧を下げる変圧器の軽量化、制御装置として使われるコンバーター・インバータの軽量化、モーターの一つ一つの軽量化がなされ、編成全体で11tの軽量化がなされています。

出典 https://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000027199.pdf

東海道新幹線の車両N700Sでは、従来車両のものより、パンタグラフの軽量化も図られています。

出典 https://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000035165.pdf

新技術の導入にあたって、車体の軽量化もなされていますが、もちろん新型車両の導入にあたっては、性能の向上も図られていることが資料から見て取れます。

・車体が軽かったと評判だった東急5000系電車 (初代)

 画像引用元 Wikipedia

1950年に製造を開始したと言われる、かつて東急電鉄を走っていた初代5000系という車両があり、その車体の構造には、航空機の技術に使われる「モノコック構造」が採用されており、車体重量をかなり軽減していたと言われています。

Wikipediaの主要諸元を見ると、

自重デハ5000形 (Mc) 26.6 t
デハ5100形 (M) 27.0 t
サハ5050形 (T) 20.0 t
クハ5150形 (Tc) 21.5 t
出典 https://ja.wikipedia.org/wiki/東急5000系電車_(初代)

となっています。

また、車体の大きさは以下のようになっています。

 

全長18,500 mm
車体長18,000 mm
全幅2,740 mm
車体幅2,700 mm
全高4,120 mm
車体高3,640 mm
出典 https://ja.wikipedia.org/wiki/東急5000系電車_(初代)

車体長が18m級の車両ということで、大手私鉄やJRの幹線では主流となっている、20m級の車両に比べるとやや小さいですが、モーターを積んだ車体(デハ)であっても、重さが30tに満たないため、軽い部類になると考えていいでしょう。

冷房が搭載されておらず車体が軽かったというのもあります。

当時の状況を知る人によると、車体の軽さから、走行音が小さく、走りが静かだったようです。

モノコック張殻構造の作りから、丸みを帯びた車体によって、詰め込みが効かずに、定員確保に難があったこと、また荷重への耐久性が低いということで、モノコック構造の車体は普及しなかったようです。

 https://ja.wikipedia.org/wiki/東急5000系電車_(初代)

・鉄→ステンレス→アルミと軽量素材が使われているが、なぜか重くなる車両たち

鉄道車両の車体を作る際に使う材料は、軽量化される傾向があります。

明治、大正、昭和初期など昔の時代には、木製の車体が造られていたこともありましたが、火災に弱いこと、事故が起きた時の車両の損傷の激しさから、事故時の安全性の問題、耐久性の難がありました。

その後に、鋼製車体が普及し、その後はステンレス製、アルミ製と軽い材料が普及して来ています。

画像引用元 tech-swing.net

大宮にある鉄道博物館に、鋼、ステンレス、アルミの重さを比べられる展示がありますが、こちらで実際に手で持ったところ、この順番通りの重さでした。

アルミ製の車体が登場してきてはいるものの、特急用車両においてはアルミ製車体編成の方が、重くなっているケースがあります。

鉄道の維持費を軽減するための考案。車体の軽量化。

近年の特急用車両では、各座席へのコンセントの設置など搭載機器で増えているものもありますが、アルミ車両がコンセントを増備しただけで、一両あたりの重さが普通鋼の車両より8〜9t重くなることも考えにくいので、他に何かしら重い機器を搭載していると考えられます。

車体が重くなると、軌道(線路)にかかる負担も増えるため、折角アルミなど軽い素材が車体に使われても、軌道メンテナンスの省略化においては不利になると考えられます。

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